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病食と僕

「売り出し方をつくる」

 

もはや日記ではないレベルの「こうすけ日記」
心理ブログよりもファンが多い現実・・
心の解説者の平山こうすけです。
今回は「病食と僕」についてお話をします。

規定の食事が存在する生活がある。
子供の頃の給食、そして入院中などの食事だ。

決まったものしか食べれない生活のストレスは、
普段好きなものを食べれる人にほど残酷なことはない。
味付け、気分、量、すべてにおいて気にかけてもらえず、
ただただ出された食事を食べるしか選択が許されない。

10歳の頃に大病にかかった僕は、そんな入院生活を長く過ごした。

最初に僕はICU(集中治療室)に監禁された。
食事という世界も程遠く、常に周りに誰かいて
医療スタッフの話声と、点滴しか見るものがなかった。

そして、数日後僕は2人部屋の病室に移された。
はじめてのお隣さんは心臓病のおじさんだった。
彼が窓側で、L字に僕が入り口側。

おじさんは窓の外を見ながら僕に言った。
「あの枯葉がなくなる頃にオレもいなくなるんだ・・」
子供ながらに本当にいつ亡くなるのかリアルすぎて、
病室自体が1人部屋くらいの静寂感を放っていた。

数日して、院内を少し歩くことを許された僕は、
この知らない病院の探検にでかけた。
エレベーターで1階に降りれば売店もあって、上に上がれば
前にいた危険な階にも行ける。

僕が部屋に戻るとおじさんの姿はなく、おじさんのいた窓側
が僕のベットになっていた・・・
頭の中の情報が完結しないままに、次のお隣さんが入ってきた。

年齢が僕の1つ下である腎臓病の男の子だった。
僕たちは年も近いから、恥ずかしいながらもすぐに仲良くなった。
そして、仲良くなったその夜に事件が起きた。

17時30分になって夕食の配膳が運ばれてきた。
大きな銀の配膳ワゴン、上にはでっかいヤカンが乗っかっている。
僕の楽しみの時間だ!
毎日、いろいろな食事が出るし、ヤカンのほうじ茶が何より美味い!

実家の極薄の麦茶に比べたら、最高品質の茶であることは
間違いのない美味さ。僕は入院生活を堪能していたんだ。

しかし、同室の男の子は泣いていた。

「どうしたの?」と僕は男の子に話をかけた。
「味がなくて食べれない」と男の子は言う。
何を言っているのか分からないから僕は男の子の
ご飯を食べてみた。確かに全く味がしない。

僕はナースコールを押して看護師さんを呼んだ。
すぐに部屋に来た看護師さんは男の子をなぜか励ましていた。

その事件は翌朝も、昼食も続いた。
男の子を可哀想に思った僕は、男の子と配膳の食事を交換した。
すると男の子はすごく喜んだ。
「美味しいよ!僕これなら食べれる!」
僕はとても嬉しかった。でも交換したご飯は確かに食べれる
味ではなかったんだ。

毎回交換すると、さすがの僕もお腹がすいた。
僕のサイドテーブルの上には数千円のお賽銭のような
お金が置かれている。
お見舞いに来た人たちが「好きなもの買って食べてね」
と置いていってくれた、気持ちの集まりだ。

僕はその想いを胸にお金を持って、病院の脱出を試みた。
病院の裏には蕎麦屋があり、パジャマのままで初の外食の
門を開いた。

「いらっしゃ・・・い」と驚いた女将さんがいた。
10歳のパジャマ姿なら確かに驚くが、病院が近いから
何とか潜入には成功できた。

1人で外食に来たこともないし、注文も初めてな僕。
僕は「カツ丼ください」と女将さんに言った。

ドラマでしか観たことない丼ぶりのカツ丼。
よくドラマで犯人が刑事からもらっている美味しそうな丼だ。

僕は味のあるカツ丼をめい一杯に口に運んだ。
美味しかった。美味しすぎる。
そもそも揚げ物を卵で衣を緩めるなど御法度な僕の家では
一生食べることのない食べ物。
揚げ物はサクサクが1番であり、ゆるくすることは皆目見当もつかない家。

そんな人生の僕に、カツ丼は新しい世界平和を教えてくれた。
隣人の男の子、心からありがとう。

そんな中毒性の高いカツ丼生活は数日に及び、
悪行も終わりの日を迎えてしまった。

毎日行われる僕の採血検査で脂質異常がみつかった。
原因は何か強く言われ、僕はカツ丼のことを告白をした。

瞬く間に同室の男の子も部屋を移動され、
サイドテーブルには数百円しか置かれなくなってしまった。
僕は相方の男の子もお金も失った。

2人部屋なのに1人。

最初に部屋に来た時のおじさんを思い出した。
「あの枯葉が無くなる頃、僕もいなくなるのかな・・」
いつも見る窓の外を見上げた?

あれ?あの枯葉?

僕の部屋は4階。枯葉が見える木は下を覗かないと
木が見えない・・・

あのおじさんは何を見てたのだろう。
もう脱走も出来ない僕だけどカツ丼は美味しかった。

 

 

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心の解説者®︎・エッセイスト 平山 こうすけ

 

 

 

心の解説者®︎・エッセイ・随筆・ポジティブ心理・サイコパス・ユーモア哲学・売り出し方・コーチング・平山 こうすけ コウスケさん

 

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