アリーと僕
「売り出し方をつくる」
心の解説者®︎ 平山です。
ガパオとカレー
夏といえばカレーの季節。僕は普段の食事の中で
カレーライスをあまり食べない。そんな僕でもインドカレー
だけは思い出があって食べに行く。
15時という飲食店のほとんどが中休みの時間に
インドカレー屋さんは休むことなく営業をしている。
外国人のお店には日本人のお店よりも真面目な印象を感じる。
感染症の影響もあり入り口のドアには「人数制限しています」
の紙が貼ってある。確かに今の時期にはこういった対策は
必要で、どこも大変なんだなと思いながらカランとドアを開けた。
「いらっしゃいませ〜どぞ〜」とカタコトのなまりの店員さん
店内には僕しかない。人数制限の制限は混雑時のことなのかな?
と思い返しながらチェックのテーブルに僕は座った。
これこそインドカレー!といったスパイスの香りが
店内に広がっている。この香りが懐かしい。
学生の頃、僕の地元には多くの中東の外人が住んでいた。
子供だった僕は恐れもなく1人の外人と知り合った。
工場で働いていたアリーはニューデリー出身のインド人だった。
アリーの働く工場の2階が彼の住まいで、そのアリーの部屋で
はじめてインドカレーを食べたことを鮮明に覚えている。
恥ずかしいことに僕の母親はカレー(シャバシャバ)が美味しくない。
だからカレーには抵抗感が高めに設定されていた僕に
この世にこんなにも美味しいカレーがあることをアリーが
教えてくれた。そしてライスではなくナンという食べ物の存在も。
アリーの思い出を胸に店員さんに僕は尋ねた。
「オススメってなんですか?」
「オススメはこれですぅ」
店員さんは壁に貼ってあるメニューを指さした。
???(笑
ガパオじゃないか・・しかも「がパオ」。
写真の構成もちょっと思考が斜め上に走っているし、
紅茶のテイーはチャイしか譲らないメニュー。
僕の胸にいたアリーの思い出を返してほしい。
僕はカレーを食べに来たんだよ。
ここで大人な僕は店員さんのオススメを受け入れたいけれども
僕は、ほうれん草とチキンカレーのセットを頼んだ。
「ごめん・・店員さん」と胸でささやいた。
熱々のナンを小さくちぎって濃厚なカレーソースをつけて
口へと運ぶ。「おいしい」これが食べたかった。
想いを寄せた食べ物を食べた時の感動には甲乙つけがたいが、
これはおいしい!アリーを思い出す!
アリーの時は冷凍のナンで丸かったかな・・
寂れた倉庫の2階で仲良くアリーの地元の話をした。
ホームビデオでとったアリーの家族を見ながら、
アリーの作ったカレーを食べながら楽しい会話しかなかった。
アリーのつくるお母さんの味は豆(ダル)カレーで
一緒に食べていたカレーは主に豆のカレーだったんだ。
あの頃いつものようにアリーの倉庫に足を運ぶ僕に
衝撃の光景が目の前に映っていた。
2台並ぶパトカー、肩を落として手錠をされているアリー。
後方のパトカーに搭乗していた社長さんが僕に言った。
「おまえ、悪いけれどここ閉めるから」
僕は何が起きたのかも理解できないままに、
うなずくことしか出来なかった。
数日が過ぎて親がアリーの詳細を教えてくれた。
「コウスケ、アリー強制送還でインドに帰ったって」
「強制送還??」と僕は聞き返した。
「パスポート切れていると日本にいちゃいけないのよ」
その当時は意味がわかっていなかったけれど、
インドカレーを食べるたびにあの西部警察ばりの光景を
思い出す。
カレーの美味しさを教えてくれたアリーのことも、
温かい家族に育てられ、早く帰りたい気持ちのアリーの
話も。
「がパオ」にはやられたけれど(笑
やっぱりインドカレーって美味しいなぁ
頑張る皆々様を応援しております。
心の解説者®︎・構成ライター 平山 紘介
心の解説者®︎・構成ライター・講師・売り出し方・コーチング・心理・平山 紘介 コウスケさん